茶、美、くらし

お茶と食事 余珀 店主。お茶、日本の美、理想のくらしを探求中

余珀日記13

学生時代の友人が来てくれた。彼女は我々を「あやっぺ」と「かっつん」と呼ぶ。彼女がいなければ私と夫は出会っておらず、当然余珀も生まれていない。年内最後の通常営業日に相応しい特別なお客さまだった。

その夜、彼女は私の家にやってきた。彼女お勧めのラーメンズのビデオを一緒に見ることになっていた。深夜に見終わると、明日からあるゼミが始まることを彼女は教えてくれた。

それは就職活動に向けた作文教室だった。元新聞記者の先生が文章を見てくれるのだという。深く考えもせず行くことに決めた。

次の日、雨の降るなか約束の研究室を目指した。時間ぴったりに建物に着くと、エレベーターのドアが閉まりかけている。急いで駆け込むと中で「開」ボタンを押し続けてくれている人がいた。膝まである紺色のレインコート。目にかかりそうな前髪。大人っぽいので大学院生だと思った。はじめて夫に出会った瞬間だった。

大学院生だと思った彼は私と同じフロアで降り、同じ教室に入ってきた。私たちは毎週与えられたお題で文章を書いて提出し、毎週先生に添削を受け、毎週仲間からコメントをもらった。我々はその頃から一緒にいる。エレベーターで出会ったことは夫も覚えているらしい。

2020年。彼女は二児の母になり、ラーメンズは活動を終了し、我々は余珀を始めた。毎年年末に誕生日を迎える夫とその年を振り返る。毎年「今年はすごかった」と言っている気がするが、今年は本当にすごかった。出会ってから今まで、人生の楽しさを更新し続けられているのも夫のおかげだ。ありがとう。来年も楽しく余珀を育てていこう。お誕生日おめでとう。

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