茶、美、くらし

お茶と食事 余珀 店主。お茶、日本の美、理想のくらしを探求中

散歩

目の前に黄色い葉が一枚落ちた。見上げると空を覆う葉は緑の色ばかり。色づいてなどなかった。黄色い葉が木についているわけではない。黄色くなったから落ちたのだと合点。すっと伸びた枝。ごわごわ硬そうな樹皮。小さく小さく分解すれば私と同じ原子でできているとは信じがたく、思わず幹に触れる。今朝の雨の気配が残る皮膚。



少し歩く。池のほとりにねむの木。ひときわ繊細で柔らかな葉。垂れ下がる枝が髪の毛のように揺れる。風になびくという表現がこの辺で一番似合っている。



夏のような気温。蝉の声がするのに気づき驚く。とっくの昔に鈴虫たちに入れ替わったものだと思っていた。今までどこに隠れていたのか。暑さと蝉時雨だけ抜き出して感じれば、10月というのが嘘のよう。でも、この清々しさは夏にはない。



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