茶、美、くらし

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「幻を見るひと -京都の吉増剛造-」

「幻を見るひと -京都の吉増剛造-」


The Reality Behind What We See

〜The Poet, Yoshimasu Gozo, in Kyoto〜



詩が生まれゆく瞬間。

それに私は何度も立ち会った。


たぶんそこだけ空気が濃くなる。

たとえば蝶々のはばたき。

雫が落ちて広がる波紋。

とろりとした水の中から

葦みたいなものがすぅっと一本立ち上るような。

そこにも。ここにも。ある。

土をたたく。たたく。

化石が見つかる。

見つかるとすぐに風化する。

消えてなくなる。

それ。それこそが。

女の人が何かを話している。

声。歌。舞。

体の奥の奥から

喉を何度も震わせて

たしかめる。揺らす。

何かが発動する。始まる。

胎動。

蠕動。

細胞分裂

深い深い生命の営み。

宇宙の始まり。


詩を書くということ。

生きるということ。


この映画を観て

なぜ、こんなに何度も泣きたくなったのか。

よく分からない。

生命の、創造の、何かの蠢きに

心が、細胞が、揺さぶられ、震え、喜んだ。


詩人、吉増剛造さんを追ったドキュメンタリー映画

琵琶湖の地下水を豊かにたたえる京都を舞台に、我々は吉増さんと水を巡る旅をする。

四季折々、映し出される京都の風景の美しいこと。

震災を経て、変わった、変えようとした、水のイメージ。

訪れる場所で湧き上がる感覚、起き上がる記憶。

目で、耳で、体で、吉増さんは感じ、見つけ、声に出し、くり返し、響かせて、揺らして、紡がせていく。

たぶん、紡ぐ、だけでなく、紡がせている。

「発動」という言葉を吉増さんは使われた。

それが立ち上がる瞬間に同行する、時空を超えた旅。

探幽の龍に向けて詩を朗読される場面では、水のイメージが、次々に現れ、何層も重なり合い、枝葉を伸ばし、絡み合って、天井の龍に目がけて螺旋を描いて昇っていくような、ただただ圧倒された。


上映最終日の2日前にDavidさんに教えてもらい

最終日の最終回、ぎりぎり観ることができました。

ものすごい映画でした。

観ることができたことに心から感謝いたします。

上映終了後の舞台挨拶で、吉増さんご本人のお話を聴けたのも幸せでした。

ありがとうございました。


https://www.maboroshi-web.com/



2018年12月3日


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